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大阪大学と東京大学による、生命らしさを持つ機械人間「オルタ(Alter)」日本科学未来館で公開

ニュース (2016/08/02)

大阪大学石黒研究室と、東京大学池上研究室による、生命らしさを持つ機械人間「オルタ(Alter)」が日本科学未来館で8月6日まで公開されている。「オルタ」は顔から首、手のあたりは皮膚に覆われているが、背中や腕は機械がむき出しだ。何かをしゃべっているように見える。頭部や腕はしきりに動き、背後で流れる音に合っているようにも見える。

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日本科学未来館に現在展示中の、生命らしさを持つ機械人間「オルタ」。記者発表の日は、周りを報道陣に囲まれていたので、しきりに動いていたが、周囲の人混みがなくなるとどうなるのだろうか。

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大阪大学石黒研究室は、今まで人間そっくりの見た目と動きを持っているアンドロイドを開発しており、日本科学未来館にもオトナロイドとコドモロイドという人間そっくりのアンドロイドを提供している(3階で展示中)。大阪大学大学院 基礎工学研究科の石黒浩教授によると、それらのアンドロイドは、ストレートに人間をまねることで、人の存在感を表現することが目的だったそうだ。しかし、今回は東京大学大学院 総合文化研究科の池上高志教授と共同で、今までのアンドロイドとは異なるアプローチで、人間らしさを表現しようとしているそうだ。そもそも、機械の人間らしさを表現するのに、人間らしい姿や形は必要ないのではないかということを考え、実証するためのロボットが「オルタ」であるとのこと。開発の担当は大まかに、ロボットや制御するシステムは大阪大学、ロボットに人間らしい動きをさせるところは東京大学となっている。
なお、現段階で完成されたロボットというわけではなく、日本科学未来館の1週間の展示の中で、来場者たちの意見や感想を聞きながら、開発を進めていく。最終日の8月6日には、1週間で進化した「オルタ」について、開発に参加した東京大学大学院 総合文化研究科の土井樹氏、大阪大学大学院 基礎工学研究科の小川浩平助教、東京大学大学院 総合文化研究科の池上高志教授、石黒教授でパネルトークを行う予定。

「オルタ」の研究は、以下のような疑問に対して、不完全ではあるけれど、今までには明確に提示されなかった答えをロボット技術によって表現しようとしているとのこと。
・生命を持つように感じさせるのは何か
・機械人間は人間やほかのロボットよりも、より生命を生き生きと感じさせるものになるか
・機械が生命を持つように感じられると、観察する側に何が起こるのか
これらの疑問に対して、この1週間の展示と開発にを通して、非常にインパクトの強いモノができれば、人とかかわるロボットの本質を研究するもう一つのロボットになると、石黒教授は語った。

「オルタ」のしくみとしては、CPG(Central Pattern Generator。脳や脊髄に存在する、周期的な信号を生成する回路)とニューラルネットワークを組み合せたコンピュータ制御で動いている。制御原理としては、それぞれの関節にはCPGが割り当てられており、それらが互いに、身体性を介してゆるくつながっている。その結果として、体の動きに応じて自発的に周期性が破壊され、カオス的な運動が創出する。CPGにはいくつもの長周的なモードや、カオス的な運動モードが埋め込まれており、環境の変化に応じて自発的に選択される。
ニューラルネットワークについては、イジケビッチ型人工細胞モデル(神経細胞のもっとも簡単なモデルの一つ)を数百から数千結合させて、それが持つ自発的なゆらぎのパターンを動きの生成に組み込んでいる。
身体はは42本の空気圧アクチュエータで構成されており、性別や年齢が不明な顔のデザインとなっている。最初に紹介したように、皮膚でおおわれている部分は顔や首、手のあたりのみで、表現能力が乏しくならない程度に抑えたとのこと。なお、身長は150cm程度で、重量は80kg。

「オルタ」が展示されている周囲には、東京大学で開発したセンサネットワークが設置されており、距離センサー、照度センサーの値を取っている。そのセンサーからの信号を非線形にかけ合わせることでどのフレームレートでセンサーの値を取っているか決めているとのこと。そのサンプリングレートの値を、運動の可動域や運動のモード(GPGとニューラルネットワークどちらの動きを選択するか)の切り替えに反映しているそうだ。ただし、サンプリングレートの値も自発的に決まっており、いつモードが変更になるのかはわからないとのこと。

senser_net_1.jpg「オルタ」の周囲に配置されたセンサーで取った値が、「オルタ」の動作に影響している。

「オルタ」は人間が操縦しているのではなく、また決められたプログラムを再生しているわけでもない。それを見て、どう感じるのか。自分が抱いた感想が「オルタ」の進化に反映されていくことにもなるので、ぜひ見に行ってはいかがだろうか。

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