研究開発事業や教育開発事業、人材開発事業等を展開している株式会社リバネスが、板金・プレスを中心とした金属加工業の株式会社浜野製作所に出資、モノづくりの技術やノウハウを必要とするテクノロジーベンチャーを対象としたものづくり支援のプラットフォームを拡大していくことに同意した。2016年9月2日に記者会見を行った。
左から、株式会社浜野製作所 代表取締役の浜野慶一氏、株式会社リバネス 代表取締役CEOの丸幸弘氏、株式会社チャレナジ 代表取締役CEOの清水敦史氏。皆さんが手に持っているのがチャレナジーが開発、現在実験を行っている「垂直軸型マグナス風力発電機」の模型。
浜野製作所は、産学連携による新しいものづくりにも取り組んでいる。有名なところでは、深海探査船「江戸っ子1号」の開発や日本テレビで放送された「リアルロボットバトル日本一決定戦」にロボットを製作して参加したなどの実績がある。2014年にはものづくりベンチャー等と町工場をつなぐハブ機能を持った「Garage Sumida(ガレージスミダ)」を開設し、ものづくりベンチャーを設計・試作の面でも支援している。
一方リバネスは、2013年より科学・技術を活かした新たな事業の創造を目指すベンチャー企業の発掘、育成を行うシードアクセラレーションプログラム「TECH PLANTER」を展開している。その中で、知識やアイデアがあっても、形にするものづくりの技術やノウハウが不足しているスタートアップ企業を支援するために、2014年に浜野製作所と業務提携を行い、「Garage Sumida」を主な拠点とし、さまざまなベンチャー企業の試作品開発や量産化のサポートを行ってきた。
なお、この2社はこれ以前の2012年より、研究者向けの研究機器の共同開発や、研究者向けの受諾開発事業を行っている。
今回、今までの業務提携だけではなく、資本提携としたのかについて、そのきっかけとして、株式会社リバネス 代表取締役CEOの丸幸弘氏は、日本がもっとも強いのは何かを考えたときに、ものづくりをもう一度見直すべきではないか、と考えたそうである。
丸氏は、日本の研究はまだ高いレベルにあるが、表に出すのがうまくないと感じ、また町工場が衰退し、減っている現状で、匠の技術が残っている現在はまだよいが、10年後にはいなくなってしまうのではないかと危機感を持ったそうだ。シンガポールやマレーシア、アメリカなど、海外にも拠点を持つリバネスは、日本だけでなく海外の研究者や企業家たちが欲しがっているものを日本の町工場の技術を活用して開発する、ということを考えている。しかし単に日本でモノを作るというだけではなく、「Garage Sumida」やインキュベーターを利用して、日本で会社を設立し、日本で上場して、その技術や製品は海外マーケットへ輸出をするという流れを考えているそうだ。日本だけでなく海外のアントレプレナーに、日本で会社を興してもらい一緒に技術や製品を開発し、それを海外に持って行ってそこの課題を解決する、これが本当のグローバル化ではないかと丸氏は語った(インバウンドグローバライゼーションと呼んでいるそうだ)。リバネスとしては、海外に行き、日本の町工場の技術をプレゼンテーションする役割を担うという。開発や会社登記を担う浜野製作所とは今後の展開を考えたときに、より一体化しての対応が必要になると考え、今回の資本提携に至った。具体的にはリバネスが浜野製作所に500万円を出資することになる。
今回の資本提携について、株式会社浜野製作所 代表取締役の浜野慶一氏は、町工場のように、鋳物や金型、溶接等といった、モノを作るときの基盤となる技術を持つ会社は一度なくなると、先進国で復活させるのは難しいということ、それなのに町工場は減ってきており、若者の参入が少ないため、後継者不足で廃業となる会社が少なくない現状に危機感を持っていたそうだ。自分たちの世代で、次世代に残していかなくてはならないと考えたそうだ。これからの社会を生き抜いていくには、業界業種、地域を超えた企業と連携をしながら、元の資本のところから新しい道にチャレンジしたほうがいいかと考え、資本提携をリバネスに申し込んだという。今後もスタートアップベンチャーを一緒にやっていくそうだ。現在、「Garage Sumida」には6社のベンチャーが入居しており、ロボット系の企業が多いという。今後は医療や宇宙開発といった分野も手掛けていきたいとのこと。ただ「Garage Sumida」は12社が限界とのことで、別にインキュベーションビルを建てて、20?30社が2?3年で入れ替わっていくようにしたいとのこと。
今回の記者発表では、「TECH PLANTER」を通じてリバネスと浜野製作所がものづくり支援、経営支援を行っているベンチャーである株式会社チャレナジーの代表取締役CEOの清水敦史氏も出席、現在沖縄で実験を行っている、プロペラのない次世代風力発電機「垂直軸型マグナス風力発電機」の紹介や、サラリーマンだった清水氏が福島第一原発の事故をきっかけに、風力発電にイノベーションを起こそうと思い、現在に至る経緯を説明した。リバネスも浜野製作所も、このようなものづくりの関わるベンチャーを支援していきたいと語っていた。