内容紹介
環境、食料、健康などの問題を解決し、持続可能社会を創る新しい科学
バイオミミクリー(Biomimicry)は、自然に学び、生体に似た機能を応用する新しい科学と位置づけられている。生物と自然が共生して持続可能な社会を形成するキーテクノロジーであり、水、食料、住居、健康、エネルギー、教育、雇用等の差し迫った諸問題の解決策としてのゼロエミッションと軌を一つにしている。本書は、真に持続可能な社会をつくるため、水、食料、住居、健康、エネルギー、教育、雇用等の差し迫った諸問題の解決策としての中核技術、考え方を紹介する。①もっとも効率の良いシステムは産業システムとどう違うか、②自然の生産消費モデルがいかに現モデルを超越しているか、等々を、数多くの実例、写真で解説する。
目次
主要目次
<巻頭口絵>カラー写真で見るバイオミミクリー
第1章 自然のこだまを返す----なぜいまバイオミミクリーなのか
第2章 いかにして食べていくか----大地に合った農業----大草原のように作物を育てる
第3章 いかにエネルギーを活用するか----太陽光を生命に変える:木の葉のようにエネルギーを集める
第4章 どのようにものづくりをするか----形を機能に合わせる:クモのように繊維を編む
第5章 いかに自分で病を治すか?----自然界の専門家:チンパンジーのような治療法の発見
第6章 学んだことを、いかに蓄積するか----分子とつきあう:細胞のように計算する
第7章 いかにビジネスをやり遂げる----クローズドループの商業:レッドウッドの森のように経営する
第8章 われわれはどこに向かうのか----自然界の不思議を絶やさずに:バイオミミクリー的な未来に向かって
詳細目次
<巻頭口絵>カラー写真で見るバイオミミクリー
第1章 自然のこだまを返す----なぜいまバイオミミクリーなのか
1-1自然界を模倣した発明
1-2バイオミミックスたちとの出会い
1-3静けさの前のあらし
1-4生体内の天才(In Vivo Genius)
1-5自然が警告すること
1-6エルダの帰還:ふるさと地球への回帰
第2章 いかにして食べていくか----大地に合った農業----大草原のように作物を育てる
2-1工業化農業の深い淵に陥った人間の行きつくところは
2-2大草原物語
2-3多年生の楽観主義者たち
2-4混作栽培の衝撃的成果
2-5世界各地で実を結んでいる実践例
日本の「なにもしない」農法
オーストラリアのパーマカルチャー
ケープコッドの「ニュー・アルケミー・インスティテュート」
コスタリカの三階建て農業
ニューイングランドの広葉樹林
南西部の砂漠地帯
ローデルの再生可能な農業
中西部の放牧業
2-6革新の第一歩:いかにして踏み車を降りるか
土地の「守護神」の意見を聞く:研究
エネルギ-の帳簿をつける:エネルギー特性
土地に根を下ろす:生活共同体
2-7エディーに乗り入れて
第3章 いかにエネルギーを活用するか----太陽光を生命に変える:木の葉のようにエネルギーを集める
3-1太陽につながるへその緒
3-2電子ピンボール
3-3太陽の錬金術
二価分子(Dyads)
三価分子(Triad)
五価分子
3-4膜をかける:パワーパックをもつ触媒
3-5光速コンピュータ
3-6光酵素
第4章 どのようにものづくりをするか----形を機能に合わせる:クモのように繊維を編む
4-1ヒート(加熱)、ビート(加圧)、トリ-ト(化学処理)
4-2まずは固いものから
カキがうらやましい
智恵ある真珠
たんぱく質配列を追跡する一大ドラマ
テンプレートを釣る
自然界のように結晶を成長させる
結晶フロントガラス
三次元結晶容器
ファバー
4-3ソフトタッチ(柔軟な)材料科学―ハイテク有機体
いつものようにビッザス(byssus)
表面を掃除する
下塗り
接着剤を広げる
発泡体プラークをつくる
足糸の自己集合
足糸を密閉する
クモがやってくる*
ポップビーズ*とスリンキー**
クモの絹糸戦略
サイのジレンマを解消するために
第5章 いかに自分で病を治すか?----自然界の専門家:チンパンジーのような治療法の発見
5-1化学物質戦争:トケイソウ方式
5-2かしこい食習慣:野生の鑑定家
本能的欲求
「人は食するもの」であるか
かしこい食習慣はいかに発達したのか
かしこい食について動物はなにを教えているか
医食同源: 動物の薬剤師たち
気分爽快!
葉を2枚取って
さまざまな証拠
動物はいかにして自己治療法を会得したのか
植物の懐妊効果:腹痛の治療だけにとどまらず
5-3残された時間はあまりない
5-4干し草の山から1本の針を探し出すごとく
5-5うぬぼれをぐっと飲みこんで
第6章 学んだことを、いかに蓄積するか----分子とつきあう:細胞のように計算する
6-1まさか?! コンピュータがない?
6-2移植はしないで:コンピュータは巨大な頭脳ではない
脳のある生きものは、歩く、ガムをかむ、学ぶという行動を同時にできるが、シリコン・デジタル・コンピュータにはできない。
脳は気まぐれだが、従来のコンピューティングは制御に悩まされている。
脳は構造的に、コンピュータのようなプログラム制御はできない。
脳は、論理的でも象徴的でもなく、物理的にコンピューティングする。
脳はシリコンではなく、炭素でできている。
脳は大規模な並列処理でコンピューティングするが、コンピュータは線形処理を用いる。
神経単位は高性能コンピュータであり、単純なスイッチの集まりではない。
脳は副作用を利用して発達する能力を備えている。 コンピュータはあらゆる副作用を閉め出さなくてはならない。
6-3ジグソー・コンピューティング
コンピュータ、自己集合せよ
適コード生存
コントロールを断念する
6-4炭素に基づいた(Carbon key)シリコン・コンピューティング
光がスイッチを押すと…
6-5意識の足場
量子の不確定性
6-6巡回セールスマン:DNAに相談せよ
6-7生物学の豊かさを取りもどす:真の追求
第7章 いかにビジネスをやり遂げる----クローズドループの商業:レッドウッドの森のように経営する
7-1フルートループスと人類の未来
7-2愚行を限界まで続けるのか
7-3産業のグリ-ン化
7-4ブタクサよりもレッドウッドをめざす
7-5教訓を実践する
廃棄物を資源として使う
生息環境を十分に利用するために多様化し、協力する
エネルギーを効率よく取り入れて使う
最大化より最適化
材料を節約して使う
巣を汚さない
資源を減らさない
生物圏(生物を養う大気圏、岩石圏、水圏)との均衡を保つ
情報にもとづいて行動する
必要なものは地域で調達する
7-6目的を達成するには:ニッチ移動手段
境界条件
グリーン化はうらやましい
環境のためのデザイン
7-7ビジネスはジャングルだ:産業生態学の有望
第8章 われわれはどこに向かうのか----自然界の不思議を絶やさずに:バイオミミクリー的な未来に向かって
8-1バイオミミクリー的未来をめざす4段階
沈黙する:自然に身をゆだねる
耳を傾ける:地球上の動植物に会見する
こだまを返す:自然をモデルおよび手段とする生物学者とエンジニアの協力をうながす
やしない、守る:生物の多様性と天分を保護する
8-2見習い、学ぶ資質を備えている種――人間
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