内容紹介
経済学の予備知識は不要! 「行動原理」「集団内での意思決定」理解のためのエッセンスを凝縮した、実験経済学入門の決定版!
「実験経済学」は、経済学における仮説の妥当性や人々の行動や意思決定の原理を、実験を通じて明らかにする学問です。市場メカニズムの検証や人々の投資行動の解明、社会における協力行動の考察、公共経済学や労働経済学などの様々な経済学の領域は、実験経済学の手法を通して明らかになっています。また、実験結果の蓄積は「行動経済学」に直結し、行動経済学と実験経済学は密接に関わりながら発展しています。
本書では、経済実験の手法を概説するとともに、実験が適用された多くの事例を紹介し、経済学(特に、実験と関係の深いミクロ経済学)の基礎と経済実験の適用限界を、やさしく学ぶことができます。実験経済学のトレンドを踏まえ学術的な正確さを心掛けており、大学等における実験経済学の教科書としておすすめです。加えて、直観的にわかりやすく解説しているので、経済学を専門としない社会人の方々が意思決定を学ぶ際にもおすすめです。
このような方におすすめ
○経済学を学ぶ大学生・大学院生、実験経済学・行動経済学・意思決定論の講義を行う教員
○広く実験経済学・行動経済学・意思決定論に関心をもつ方々
目次
主要目次
1章 はじめに
2章 競争市場メカニズム
3章 資産市場とバブル
4章 ゲーム理論の考え方と支配可解ゲーム
5章 ナッシュ均衡とジレンマ
6章 公共財供給と集団行動の問題
7章 協調
8章 交渉問題と信頼
9章 社会的選好
10章 労働経済学・組織の経済学への適用
11章 公共経済学・政治経済学への適用
詳細目次
1章 はじめに
1.1 実験経済学とは何か?
[1]データ、実験手法の長所・短所と種類
[2]経済実験の目的
1.2 実験の設計にあたり考慮するポイント
[1]実験における制御
[2]実験の各要素と考慮すべき点
1.3 実験室内実験の実施について
2章 競争市場メカニズム
2.1 完全競争と均衡
[1]需要曲線
[2]供給曲線
[3]競争均衡
2.2 市場メカニズム実験の設定とチェンバリンによる結果
[1] 実験デザインの例
[2] チェンバリンによる実験結果
2.3 スミスによるダブル・オークション実験
2.4 実験結果の頑健性とインテリジェンスの必要性
[1] 結果の頑健性の高さ
[2] ゼロ・インテリジェンス
3章 資産市場とバブル
3.1 不確実性資産の価値
[1]リスク選好
[2]確実性等価と取引価格の理論的範囲
3.2 金融バブル
[1]標準的な実験デザインと実験結果
[2]経験の効果
[3]未経験トレーダーの投資行動
3.3 デリバティブ、先物取引とバブル
[1]空売り(ショート)
[2]先物取引
付録 実験室内実験でリスク選好を人々から抽出する方法の例
4章 ゲーム理論の考え方と支配可解ゲーム
4.1 ゲーム理論の前提と同時手番ゲーム
4.2 支配戦略と支配可解ゲーム
4.3 推測ゲーム(美人投票ゲーム)
[1]ゲームの設定と実験事実
[2]意思決定単位-個人と小集団
4.4 旅行者ジレンマ
5章 ナッシュ均衡とジレンマ
5.1 純粋戦略ナッシュ均衡
5.2 囚人のジレンマゲーム実験
[1]利得表の構造と協力率
[2]協力規範強化のための第三者による罰則
[3]認知能力と協力率
[4]繰り返し囚人のジレンマゲーム
5.3 混合戦略ナッシュ均衡
[1]混合戦略ナッシュ均衡の求め方
5.4 混合戦略ナッシュ均衡の実際
[1]実験室内実験からの示唆
[2]戦略的状況で活躍するプロ:フィールドからの事実
6章 公共財供給と集団行動の問題
6.1 公共財の特徴と供給問題
[1]公共財とは
[2]公共財ゲームで表される複数人のジレンマ
6.2 典型的な経済実験・行動事実
6.3 フリーライド行動と協力を促す要因
[1]間違いや混乱の可能性
[2]戦略的動機
[3]利己的でない選好
6.4 グループサイズ効果
6.5 ピア・ツー・ピアの罰則
[1]第1世代モデル
[2]第2世代モデル(高次罰則の導入)
6.6 貢献を促す他のメカニズム
付録1 自発的公共財供給におけるフリーライダー問題
付録2 線形公共財ゲームの実験説明書と確認問題の例
7章 協調
7.1 スタグ・ハント・ゲームから見る利得支配性とリスク支配性
[1]利得支配性とリスク支配性
[2]経済実験・行動事実
7.2 ミニマム・エフォート・ゲーム
[1]ヴァン-ハイクらによる実験
[2]効率的な協調を促すメカニズム
7.3 その他の協調ゲーム
[1]無限期間繰り返しジレンマ
[2]閾値のある公共財ゲーム
8章 交渉問題と信頼
8.1 逐次手番ゲーム
8.2 部分ゲーム完全(ナッシュ)均衡
8.3 最後通牒による交渉
[1]最後通牒ゲームでの意思決定
[2]経済実験・行動事実
8.4 信頼(トラスト)
[1]理論予測
[2]経済実験・行動事実
8.5 センティピードゲーム(ムカデゲーム)
9章 社会的選好
9.1 不平等を嫌う選好
[1]ディクテイターゲーム
[2]第三者による罰則
[3]囚人のジレンマゲーム
9.2 互恵性
9.3 その他
付録 第三者による裏切り者への罰則行動分析
10章 労働経済学・組織の経済学への適用
10.1 リアル・エフォートタスク、金銭的インセンティブと労働
10.2 モラル・ハザードと怠業
[1]1/N問題
[2]経済実験・行動事実
10.3 ギフトと互恵性
[1]アカロフによるギフト・エクスチェンジ理論
[2]実験室内実験
[3]フィールド実験からの事実
10.4 昇進などのトーナメント制度と労働貢献行動
[1]トーナメントの例
[2]経済実験・行動事実
付録 序列トーナメントにおける賞の大きさと労働貢献量
11章 公共経済学・政治経済学への適用
11.1 制度の効果
11.2 人々による効率的な制度の遂行の可能性
[1] 投票による制度の構築行動
[2] 正式な制度が社会や組織で求められる条件
11.3 民主主義
11.4 選挙などにおける票の買収
参考文献
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