内容紹介
多様体上の最適化理論の数理を、詳しく丁寧に解説!
本書は、多様体上の最適化理論について、基礎となる数理から応用例までを解説するものです。
多様体上の最適化理論を学ぶ、あるいは研究する読者は、
・ユークリッド空間上の連続最適化を一通り学んでおり、その抽象化の仕方の一つとして多様体上への拡張について学ぶ
・多様体論をはじめとした幾何学に慣れ親しんでおり、そうした理論の応用の一つとして幾何学的な最適化を学ぶ
・最適化と多様体に馴染みがあり、両者の融合について学ぶ
・最適化と多様体のいずれにも馴染みがなくとも、具体的な応用問題に興味をもったことをきっかけに、多様体上の最適化理論を学ぶ
などのように、背景知識が様々であることを想定し、本書の執筆に際しては丁寧な論理展開による数学的記述を行うことを心がけました。
また、位相空間や多様体およびその周辺の様々な概念については、最適化において必要なもの(ないと困るもの)を挙げながら議論を進めていくスタイルで記述しました。多様体や、多様体上の関数の微分や勾配など種々の概念を定義する際には、最適化において何が必要となるかを随所で強調し、常に多様体上の最適化を目標として読み進められるよう注意しました。
本書の通読の前提とする知識は線形代数および解析学(特に微分法)の基礎的な事柄のみにとどめるとともに、読者の利便性に資するよう、付録で本書の通読に必要な知識をまとめています。また、各種アルゴリズムの数学的背景となる定理や命題の多くについて、その証明を本文や付録(一部は演習問題)で論じています。
このような方におすすめ
・最適化問題を研究する理工学系、経済学系の学生および研究者
・実装に先立ち、多様体上の連続最適化の理論について基本から理解したい学生、研究者、社会人
・多様体の応用に興味をもつ学生および研究者
目次
主要目次
第I部 最適化理論からの準備
第1章 多様体上の最適化の概論
第2章 ユークリッド空間上の最適化の基礎と無制約最適化
第3章 ユークリッド空間上の制約付き最適化
第II部 多様体からの準備
第4章 位相空間
第5章 多様体
第6章 リーマン多様体
第III部 多様体上の最適化
第7章 多様体上の最適化の基礎と無制約最適化の理論
第8章 リーマン多様体上の無制約最適化手法
第9章 多様体上の無制約最適化の応用
第10章 多様体上の制約付き最適化の理論と応用
付録A 集合と写像・線形代数・微分法・群論の基礎
付録B 定理と命題の証明
詳細目次
第I部 最適化理論からの準備
第1章 多様体上の最適化の概論
1.1 最適化問題とは
1.2 最適化問題における制約条件と多様体
1.3 最適化問題に現れる多様体の例
1.4 多様体上の最適化の応用問題例
1.5 多様体上の最適化のためのライブラリ
演習問題
第2章 ユークリッド空間上の最適化の基礎と無制約最適化
2.1 連続最適化問題
2.2 凸集合と凸関数
2.3 無制約最適化問題の性質と解法
2.4 無制約最適化アルゴリズム
2.5 無制約最適化の具体例
演習問題
第3章 ユークリッド空間上の制約付き最適化
3.1 制約付き最適化問題の基礎事項
3.2 数学的準備
3.3 最適性条件
3.4 拡張ラグランジュ法
3.5 2次制約付き最適化から球面上の最適化へ
演習問題
第II部 多様体からの準備
第4章 位相空間
4.1 考察:一般の集合上の最適化問題
4.2 距離空間と開集合・閉集合
4.3 位相空間の定義と写像の連続性
4.4 積位相
4.5 商位相
4.6 点列の収束性とハウスドルフ空間
4.7 第二可算空間
4.8 コンパクト性と最大値・最小値の定理
4.9 考察:位相空間上の最適化問題
演習問題
第5章 多様体
5.1 位相多様体
5.2 微分構造と滑らかな多様体
5.3 写像の微分可能性
5.4 接空間と関数の微分
5.5 写像の微分
5.6 接束とベクトル場
5.7 積多様体
5.8 部分多様体
5.9 商多様体
演習問題
第6章 リーマン多様体
6.1 リーマン計量とリーマン多様体
6.2 リーマン多様体上の関数の勾配
6.3 リーマン部分多様体
6.4 垂直空間・水平空間とリーマン商多様体
6.5 アフィン接続
6.6 レヴィ=チヴィタ接続
6.7 リーマン多様体上の関数のヘシアン
6.8 共変微分と測地線・指数写像
6.9 リーマン多様体上の距離
演習問題
第III部 多様体上の最適化
第7章 多様体上の最適化の基礎と無制約最適化の理論
7.1 多様体上の最適化問題
7.2 レトラクション
7.3 ベクトル移動
7.4 多様体上の無制約最適化問題と最適性条件
7.5 多様体上の曲線探索
7.6 最適化アルゴリズムの収束性
7.7 収束解析において有用な諸性質
演習問題
第8章 リーマン多様体上の無制約最適化手法
8.1 最急降下法
8.2 共役勾配法
8.3 ニュートン法
8.4 リーマン多様体上のその他の無制約最適化手法
演習問題
第9章 多様体上の無制約最適化の応用
9.1 積多様体についての補足
9.2 固有値分解・特異値分解:シュティーフェル多様体やグラスマン多様体上の最適化問題
9.3 正準相関分析:一般化シュティーフェル多様体の積多様体上の最適化問題
9.4 混合正規分布モデル:正定値対称行列がなす多様体に基づく最適化問題
演習問題
第10章 多様体上の制約付き最適化の理論と応用
10.1 多様体上の制約付き最適化問題
10.2 カルーシュ・キューン・タッカー条件の多様体への拡張
10.3 制約想定の関係
10.4 多様体上のカルーシュ・キューン・タッカー条件の適用例
10.5 拡張ラグランジュ法
10.6 非負主成分分析:球面上の制約付き最適化問題
演習問題
付録A 集合と写像・線形代数・微分法・群論の基礎
A.1 集合と写像
A.2 線形代数
A.3 微分法
A.4 群と群作用
演習問題
付録B 定理と命題の証明
B.1 ハイネ・ボレルの被覆定理の証明
B.2 接束の性質の証明
B.3 部分多様体の性質の証明
演習問題
演習問題解答例
参考文献
索引
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