内容紹介
日本の新しい電力流通・取引!
太陽光発電等の再生可能エネルギーの普及を目指し、2009年に固定価格で一定期間、電力を買い取る制度が始まりました。そして、2019年(10kW以上は2029年)以降、買い取り期間が終わる太陽光発電設備が続々と生まれています(ポストFITや卒FITと呼ばれています)。
住宅用10kW未満の太陽光発電設備の場合、2009年には48円/kWh、2018年では26円に下がっており【付記2021年度は19円/kWh】、FIT終了後の太陽光発電の買い取り価格は8円/kWh前後の価格帯で各社が提案をしています。
このような価格帯になってくると、自宅に蓄電池を設置し、昼間は太陽光発電で充電、夜間には充電された電力を使用するということの経済的メリットが見えてきます。あたらしい電力流通が始まるといえます。
本書は、太陽光発電等再生可能エネルギー設置者と需要家(住宅・企業等)とのP2P電力取引について、技術やブロックチェーン・機械学習の活用を解説します。
電力関係者必携の書籍です。
※TRENDEは、東京大学、トヨタ自動車 未来創生センターと共同で、ブロックチェーンを活用し電力網につながる住宅や事業所、電動車間での電力取引を自律的に可能とする次世代電力取引システム(P2P電力取引)の実証実験を、2019年6月17日から2020年8月31日まで、トヨタの東富士研究所と周辺エリアで実施。その結果、「再生可能エネルギー(再エネ)の効率的な利用を実現する自律的な電力需給システム」であり、かつ、「電力料金削減」に有効であり、参加した一般家庭(含、電動車)の電気料金を約9%低減できることを確認。
TRENDE株式会社プレスリリースより
https://trende.jp/news/press/20201113/
※P2Pとブロックチェーン
P2P(ピーツーピー)は、Peer to Peer(ピアツーピア)の略で、本書の場合は、発電者と需要家がそれぞれPeerであり、1対1の取引を意味します。
ブロックチェーンは、発電者と需要家の1対1の取引の記録に使用します。改ざんされにくく低コストなシステムであるため、利用量等の記録に適切な技術といえます。
このような方におすすめ
電力会社、小売電気事業者、再生可能エネルギー関係各社
目次
主要目次
第1章 日本の電力事情
第2章 あたらしいエネルギーの動き
第3章 P2P電力取引システム
第4章 P2P電力取引の技術
第5章 P2P電力取引の事例
第6章 日本の電力流通の未来像
詳細目次
まえがき
謝辞
第1章 日本の電力事情
1.1 日本のエネルギー事情に関して
1.1.1 パリ協定(COP21)
1.2 日本の再生可能エネルギー事情
1.2.1 固定価格買取(FIT)制度
1.3 再生可能エネルギーの目標コスト
1.3.1 グリッドパリティ
1.3.2 ストレージパリティ
1.4 太陽光エネルギー普及の障壁
1.4.1 計画値同時同量
1.4.2 系統電力の乱れ
1.5 本章のまとめ
第2章 あたらしいエネルギーの動き
2.1 分散型電源の持つ可能性
2.2 ディマンドレスポンス
2.2.1 仮想発電所(Virtual Power Plant, VPP)
2.2.2 ネガワット取引
2.3 蓄電池の普及
2.3.1 電気自動車(EV)
2.3.2 V2G/V2H
2.4 ビジネスモデルによる再生可能エネルギーの普及
2.4.1 第三者所有モデル(Third-Party Ownership, TPO)
2.5 本章のまとめ
第3章 P2P電力取引システム
3.1 データ、電力のつながりの違い
3.2 P2P電力取引マーケットのレイヤー構造
3.3 P2P電力取引マーケットの参加者
3.4 P2P電力取引エージェント(計測、予測、入札)
3.5 P2P電力取引マーケット内でのやりとり
3.6 ブロックチェーンを利用したP2P電力取引システム
3.7 P2P電力取引の特徴
3.8 P2P電力取引における社会経済原理性
3.9 P2P電力取引に期待されていること
3.10 既存電力市場とP2P電力取引マーケットとの関係性
3.11 現存するP2P電力取引の課題
3.12 本章のまとめ
第4章 P2P電力取引の技術
4.1 P2P電力取引を実現するために重要な技術
4.1.1 ブロックチェーン
4.1.2 ブロックチェーンの価値
4.1.3 価値移転を記録するデータベース
4.1.4 自律分散型組織(DAO)
4.1.5 ブロックチェーンが持つ問題
4.1.6 P2P電力取引とブロックチェーン
4.2 電力業界における機械学習の利用
寄稿:株式会社Sassor 田中 龍亮
4.2.1 機械学習とはなにか
4.2.2 機械学習の電力技術への応用
4.3 電力データのための機械学習モデルの構築
寄稿:株式会社Sassor 田中 龍亮
4.3.1 時系列の予測モデル
4.3.2 予測モデルの構築例
4.3.3 その他の時系列予測モデル
4.3.4 電力需要予測の研究
第5章 P2P電力取引の事例
5.1 海外の事例
The Brooklyn Microgrid
Lition
D3A
Grid+
5.2 日本の事例
Enection2.0
Open Energy System
浦和美園プロジェクト
5.3 この章のまとめ
第6章 日本の電力流通の未来像
6.1 顕在化しつつある電力インフラの老朽化問題
6.1.1 次世代電力ネットワークへの移行
6.1.2 自立コミュニティ増加による系統負担の低減
6.2 欠かせない再生可能エネルギーの活用
6.2.1 系統との連携
6.2.2 電力供給と販売の新たな取り組み
6.3 マイクログリッドが解決する課題
6.4 IoE(エネルギーインターネット網)と既存のスマートグリッド概念との違い
6.5 RE100への取り組み
6.6 P2Pで変わる電力会社と顧客の関係、地産地消、企業の地域貢献
6.7 マイクログリッドへの移行で求められる制度改正
6.8 日本における将来の形と世界への技術提供
索引
著者紹介
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